Website of Pathology
by Makoto Mochizuki, M.D., Ph.D.


感染症の病理

感染症の病理組織診断の目的は2つある。
 1) 炎症のパターンから病原体を推測する。
 2) 病原体を標本上で見つける。

1) 炎症パターンからの推測
 組織像のパターンからのみでは病原体は断定できないが、推測により、他の検査の補助とする。

好中球浸潤(=化膿性炎症):
 細菌感染をまず疑う。そのほか組織破壊がおこると好中球は浸潤するので、真菌、ウィルス、異物、外傷、膠原病などでも好中球浸潤は見られる。

好酸球浸潤:
 寄生虫感染をまず疑う。そのほかI型過敏症などでも見られる。

類上皮細胞肉芽腫形成(下記参照):
 結核、非結核性抗酸菌、らい病(ハンセン氏病)、クリプトコッカス、ウィルスなどの感染で見られる。そのほかサルコイドーシスや関節リウマチや血管炎など非感染性疾患でも見られる。

形質細胞浸潤:
 梅毒の特徴である。そのほか慢性炎症一般で見られる。

Tリンパ球浸潤:
 ウィルス感染の可能性がある。そのほか拒絶反応や過敏症でも見られる。皮膚の炎症性疾患ではTリンパ球浸潤が目立つことが多い。

2) 病原体を組織標本上で見つける
 いろいろな染色や手法を用いて、病原体を明確にできる。
 特殊染色: グラム染色、PAS染色、グロコット染色、チール・ニールセン染色などで病原体を染め分けることができる。
 酵素抗体法: 特異的な抗体で病原体の存在を同定することができる。
 In situ hybridization: 組織標本上で、病原体のDNAやRNAを用いて病原体の存在を同定することができる。
 核内、細胞質内封入体: ウィルスによって、感染細胞に特異的な核内構造や細胞質内構造が見られるものがある。
 原虫や寄生虫: これらは大きいので光学顕微鏡で見つけることができる。
 電子顕微鏡: ウィルス粒子を見つけることができる。

 感染症の各論については、下記の堤寛先生のテキストを見てください。

Pathology of Infectious Diseases (英語版)   http://pathos223.com/en/ (←クリック)
感染症病理アトラス復刻版   http://pathos223.com/atlas/index.htm (←クリック)
Pathology of Skin Infection (英語版)   http://pathos223.com/bookintroduction/wabun_pathology_of_skin_infectious.html (←クリック)

肉芽腫性炎症のまとめ

 肉芽腫性炎症は、慢性炎症の一特殊系である。
 ある種の特殊な病的状態で認められる。
 上皮様の外観を呈する活性化マクロファージ(類上皮細胞)の集積を特徴とする。

 類上皮細胞肉芽腫 クローン病  類上皮細胞肉芽腫 サルコイドーシス

 ヘルパーTリンパ球(TH1)が持続的に反応する状況で、Tリンパ球由来のサイトカイン(INFγなど)がマクロファージの慢性的な活性化を引きおこし、類上皮細胞として集積させる。原因因子が殺菌や分解に抵抗性であることが多い(抵抗性なので持続性反応となる)。

 類上皮細胞肉芽腫が見られる疾患は、実は、非常に多くのものが知られている。
 たとえば、結核感染、非定型抗酸菌感染、梅毒、らい病(ハンセン氏病)、ねこ引っかき病、クリプトコッカス感染、ある種のウィルス感染、サルコイドーシス、多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、過敏性肺臓炎、クローン病、慢性関節リウマチ(リウマチ結節)、異物反応、慢性肉芽腫症などである。

[2020.4.]


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