Website of Pathology
by Makoto Mochizuki, M.D., Ph.D.


中枢神経系

神経系の細胞病理学

 傷害を受けた時の中枢神経系の細胞の反応は特殊なので、以下に簡単にまとめる。

神経細胞の傷害に対する反応
 不可逆的低酸素や虚血などにより急性の細胞傷害がおこると、神経細胞の核は濃縮し細胞質が萎縮し好酸性になる。その後、神経細胞は脱落する。慢性の細胞傷害で徐々に神経細胞が脱落する場合には、数の減少で判断することになるが、この時、周囲に反応性に増殖する星細胞が目安になる。神経細胞の細胞質内に異常蛋白が蓄積して神経細胞が脱落していくことが、いろいろな変性疾患で知られている。
 神経細胞の軸索が断裂すると、軸索は腫大し(スフェロイド spheroid)、神経細胞は再び突起を伸ばすために、細胞質は丸く腫大し、核やニッスル小体が細胞質辺縁に移動する(虎斑溶解 central chrpmatolysis)。

アストロサイト(星細胞, 星膠細胞)の働きと傷害に対する反応
 アストロサイトは脳内の修復に関わる。傷害部位でアストロサイトは増加する。反応したアストロサイトは細胞質が腫大し、突起が増える(肥胖性アストロサイト gemistocytic astrocyte)。脳の組織修復では、アストロサイトが増生して組織を埋め(グリオーシス gliosis)、線維芽細胞はほとんど出現しない。組織破壊が高度だと好中球、単球が浸潤し、さらにリンパ球浸潤が見られる。組織破壊が広範な場合は最終的には組織欠損や空洞形成が見られ、瘢痕形成はほとんどおこらない。
 脳組織は液化壊死(融解壊死)に陥る。

ミクログリア(小膠細胞)の働きと傷害に対する反応
 ミクログリアは活性化すると貪食細胞として働く。小壊死巣や脱落する神経細胞を囲むように集まる。組織破壊が高度な場合は、単球由来の貪食細胞(好中球など)が血中から動員される。

オリゴデンドロサイト(乏突起膠細胞)の働き
 オリゴデンドロサイトは髄鞘を産生している。進行性多巣性白質脳症などの脱髄性疾患では、脱髄病巣でオリゴデンドロサイトの減少が見られる。

先天奇形

無脳症(無脳児)
 大脳半球、頭蓋骨が欠損する。
 大部分は死産で、1週間以内に死亡する。

二分脊椎
 先天的に脊椎骨が形成不全となって起きる。
 脊髄髄膜瘤ともいう。腰椎、仙骨に多い。
 脊髄が脊椎の外に出て癒着や損傷をしていることがある。

先天性水頭症
 先天性に水頭症が起こることがある。

脳浮腫と脳ヘルニア

脳浮腫
 脳浮腫とは脳実質内に水分が過剰に貯留すること。2種類の機序がある。
 血管性浮腫:血管透過性の異常亢進による。
 細胞性浮腫:脳細胞の細胞膜が傷害されることによる(虚血や毒)。細胞内の液体成分の増加による。
 両者が同時に起こることが多い。

脳ヘルニア
 脳浮腫や脳腫瘍などで脳容量の増大がおきて脳圧が亢進し、脳組織がはみ出ることを脳ヘルニアという。はみ出る部位により、大脳鎌下ヘルニア(帯状回ヘルニア)、テント切痕ヘルニア(鉤ヘルニア)、扁桃ヘルニアがある。テント切痕ヘルニア(鉤ヘルニア)が進行すると中脳・橋の2次的出血(Duret出血)をおこし、近傍に呼吸中枢があるため致命的となることがある。

脳ヘルニア

水頭症
 脳室内の脳脊髄液が過剰に貯まる状態。脳室が拡大する。

外傷

 外傷での問題は、骨折、脳実質の破壊、血管破裂の3点にまとめられる。

脳震盪(brain concussion)
 臨床的な病名で、外傷の直後に一時的に意識変調(意識消失や記憶障害など)を来たすことをいう。原因は不明である。

脳挫傷(brain contusion)、脳裂傷(brain laseration)
 衝撃によって脳組織は傷害を受けるが、衝撃と同側の傷害(coup injury)だけでなく、反対側にも起こる場合がある(contrecoup injury)。
 物体が頭蓋骨を破って直接脳実質を裂くと脳裂傷となる。

 びまん性軸索傷害とは、外傷で広範に脳内に軸索傷害がおこることである。昏睡となる。

血管破裂
 硬膜外血腫(epidural hematoma)
 頭蓋骨内面と硬膜の間に血液が貯留する。頭蓋骨骨折に伴うことが多い。髄膜動脈からの出血による。
 急性硬膜下血腫(acute subdural hematoma)
 硬膜とくも膜の間に血液が貯留する。脳挫傷と関連しておこることが多い。皮質静脈の破裂による。

循環障害

脳は安静時心拍量の15%を必要とし、全酸素消費量の20%を使っている。酸素欠乏状態は、脳にとって一番の傷害である。

脳全体の虚血
 脳血流の全般的低下(心停止、ショック、血圧低下が原因となる)がおこると、脳は広範囲な虚血・低酸素状態となり、広範に神経細胞は壊死に陥る。全脳的な虚血では最初に傷害されるのは、海馬のSommer secterの錐体細胞、小脳のプルキンエ細胞、大脳皮質の錐体細胞である。
 「脳死」とは、脳の機能が脳幹も含めて失われ、自発呼吸のない状態を言う。
 「植物状態」とは、脳の多く機能が失われても脳幹がまだ機能しており、自発呼吸がある状態である。
 脳血流の全般的低下によって、動脈還流領域の最も遠位の領域に梗塞がおこることがあり、境界部梗塞と呼ばれる。大脳半球では、前大脳動脈と中大脳動脈の境界領域に最もおこりやすい。

脳梗塞
 動脈の閉塞がおこると局所的に虚血になり、虚血領域が壊死におちいることを脳梗塞という。全脳的な脳虚血とは区別される。
 脳梗塞になる動脈閉塞の原因は、その場におこる血栓によるものと、塞栓によるものがあるが、塞栓によるもののほうが多い。血栓性の大部分は動脈硬化性である。
 脳梗塞では、非出血性梗塞と出血性梗塞が見られる。通常は非出血性である。出血性梗塞は、側副血行路によって壊死組織への血液流入がおこったものや、血栓溶解により梗塞領域に再還流がおこったものである。

右中大脳動脈領域の脳梗塞

脳梗塞

多発梗塞性認知症
 微小な梗塞(特に皮質下領域)が多発して、認知症症状がでることがある。

ラクナ
 被殻、視床(外側核群)、橋底部などに多発して見られる小空洞のこと。小梗塞巣の場合にラクナ梗塞と呼ぶが、空洞中央に血管がある血管周囲腔が拡大しているだけのものもある。高血圧や虚血が原因と考えられている。

脳実質内出血・脳出血
 非外傷性におこる脳出血の背景で一番多いのは高血圧である。高血圧性の脳出血の好発部位は、基底核、視床、橋、小脳である。脳実質内に血腫を形成するが、血腫が脳室に穿破すると重篤になる。

脳アミロイド血管症
 脳内の微小血管にβアミロイドが沈着する。血管が弱くなり、出血することがある。関与する血管が髄膜、皮質にあるため、しばしば大脳皮質の脳葉に血腫を作る(lobar hematoma)。側頭葉、後頭葉に多い。

くも膜下出血
 激しい頭痛と意識消失を来たす。
 非外傷性くも膜下出血の原因の大部分は、ウィルス動脈輪(脳底の動脈)にできた嚢状動脈瘤の破裂である。

血管奇形
 脳に起こる血管奇形では、arterio-venous mulformation、cavenous mulformation、capillary telamgioectasias、venous angioma (varices)が知られている。

中枢神経系感染症

 病原生物が脳にいたる経路は、血行性播種、直接生着(外傷など)、近傍感染巣から頭蓋内に(副鼻腔炎などから)、末梢神経から、などである。
 髄膜炎には、細菌性、結核性、ウィルス性がある。
 脳炎にも、細菌性、ウィルス性、真菌性がある。細菌性、真菌性では脳膿瘍を作ることがある。

 プリオン病: プリオンとは異常な細胞蛋白であり、急速に進行する脳変性疾患の原因となる。プリオン病には、クロイツフェルト・ヤコブ病(急速に進行する認知症疾患)などがある。

脱髄疾患

多発性硬化症
 髄鞘の蛋白(自己抗原)に対する自己免疫的な脱髄疾患である。脳の白質に多発する境界明瞭な脱髄病変が見られる。再発と寛解のエピソードが何回も見られる。

進行性多巣性白質脳症
 JCウィルス(ポリオーマウィルス)の乏突起膠細胞への感染で脱髄がおこる。脳内に脱髄巣が多発する。免疫抑制状態で発症する。

変性疾患

アルツハイマー型認知症
 老人斑、神経原線維変化に関連する神経細胞の消失が見られる疾患。
 老人斑(plaque)とは、細胞外のβアミロイドの沈着である。
 神経原線維変化(neurofibrillary tangle: NFT)とは、細胞内へのタウ(tau)蛋白の沈着である。
 これらは、海馬、海馬傍回に最初に沈着する。その後、大脳皮質に広がっていく。
 若いのに沈着が高度な場合にアルツハイマー認知症と診断される。老人になると徐々に沈着がみられるようになるが、老人では病気とは扱わない。

老人斑。細胞外の線維の凝集がある(鍍銀染色)
老人斑

神経原線維変化。神経細胞の細胞質が黒く線維状である(鍍銀染色)。
神経原線維変化

神経原線維変化。Tau蛋白の沈着がある(免疫染色)。
神経原線維変化

前頭側頭葉変性症
 認知症とともに進行性の言語障害と人格変化があるのが特徴である。
 前頭葉、側頭葉の萎縮がみられる。萎縮部の神経細胞へのタウ蛋白の沈着があり、神経細胞の脱落する。βアミロイドの沈着はない。老人班や神経原線維変化は見られない。あるサブタイプ(ピック病, Pick disease)では、細胞質内にピック球(pick body、タウ蛋白の沈着)がみられる。

パーキンソン病(Parkinson disease)
 不随意運動(小脳症状)が主症状である。
 黒質、青斑核の神経細胞の消失がある。傷害部には神経細胞の細胞質内にLewy小体が見られ、これは神経細胞へのαシヌクレインの沈着である。
 Lewy小体は、黒質、青斑核のほかにも大脳皮質、全身の交感・副交感神経節の神経細胞にみられることがある(全身性Lewy小体病と呼ばれる)。一部の症例では認知症を伴うことがある。
 ドーパ作動性ニューロンの傷害なので、l-DOPA投与で治療される。

黒質、青斑核の黒色がうすくなっている。神経細胞の脱落を意味する。

パーキンソン病

黒質では、レビー小体(赤い丸い物体)が黒色顆粒を持つ神経細胞の細胞質内に見られる。

パーキンソン病 パーキンソン病

免疫染色で、レビー小体にはαシヌクレインが陽性である。細胞突起にも陽性となる。

パーキンソン病

ハンチントン舞踏病
 常染色体優性の遺伝性疾患。
 舞踏運動。緩徐進行性。進行すると高度な認知症となる。
 線条体(尾状核と被殻)の変性があり、そこの神経細胞にハンチントンの凝集体がみられる。
 ハンチントン蛋白質をコードする4p16.3にある遺伝子のCAG塩基反復配列伸長でおこる。正常では11-34の反復が、時には100以上に増加する。トリプレットリピート病のひとつである。

脊髄小脳変性症
 小脳性失調、感覚性失調、痙性、感覚運動性末梢神経障害などみられる疾患をこう呼ぶ。いろいろな原因によるいろいろな病気が含まれる。

筋萎縮性側索硬化症(ALS, amyotrophic lateral sclerosis)
 筋力低下、麻痺、反射亢進が進行する。感覚障害はおきない。
 脊髄、脳幹部の下位運動ニューロン、運動皮質の上位運動ニューロンの細胞死によりおこる。脊髄前角の神経細胞の消失とグリオーシスが主な所見である。運動皮質の細胞死はわかりにくい。

遺伝性疾患(代謝性疾患)

 テイ・サックス病、ゴーシェ病、ニーマン・ピック病、ウィルソン病、白質ジストロフィーなどでは、脳神経組織に異常な代謝産物が沈着して、神経組織が傷害される。

栄養障害・中毒症

ウィルニッケ脳症・コルサコフ症候群: VB1(チアミン)欠乏による。脚気がおこる。
亜急性連合性脊髄変性症: VB12欠乏による。悪性貧血がおこる。
水俣病: メチル水銀化合物(有機水銀)による中毒性中枢神経系疾患。
スモン(SMON、亜急性脊髄視神経症): 整腸剤キノホルム(クリオキノール、5-クロロ-7-ヨード-8-キノリノール)による薬害。
一酸化炭素中毒症: 一酸化炭素(CO)は酸素の約250倍も赤血球中のヘモグロビンと結合しやすく、大量のCOは赤血球の酸素供給を阻害し全身に低酸素状態をもたらす。また、高濃度のCOは組織を傷害する。


脳腫瘍

 一部の脳腫瘍の日本語名称は、様々なものがあり、どうも1つに決まらないようである。
 教科書、アトラス、取り扱い規約など読んだところ、astrocytomaは、星細胞腫, 星状膠細胞腫, 星細胞膠腫、oligodendrogliomaは、乏突起膠腫, 乏突起膠細胞腫、gliomaは、グリオーマ, 膠細胞腫, 神経膠腫、glioblastomaは、膠芽腫, 膠芽細胞腫が使用されている。日本語病名の統一がされていないのがなぜかというと、医療の現場では日本語名称が「ほとんど」使用されていないので、誰も困らないのである。私も30年病理医をやってきて、脳腫瘍の診断にもたずさわったが、一度も日本語名称を病理報告書に使用したことはないし、CPCやカンファランスで話したことはない。というわけで、この項目では、こういった腫瘍は英語のカタカナ表記を中心に用いることとする。

**神経上皮性腫瘍(neuroepithelial tumor, 広義のグリオーマ glioma(神経膠腫, 膠細胞腫))**

アストロサイトーマ astrocytoma(星状膠細胞腫, 星細胞腫)
 アストロサイト(星細胞)に分化していると考えられる腫瘍。原則的に、GFAP陽性で、細胞質に突起を持つ。
 びまん性アストロサイトーマ(diffuse astrocytoma)
 中等度悪性、grade II。
 退行性アストロサイトーマ(anaplastic astrocytoma)
 びまん性アストロサイトーマに比して細胞異型があり、増生が高度である。高度悪性、grade III
 グリオブラストーマ glioblastoma(膠芽腫, 膠芽細胞腫)
 非常に悪性、grade IV。核異型が高度、壊死を伴う、細胞分裂像が多い、血管増生が目立つ、という所見で診断される。

glioblastoma glioblastoma

 ピロサイティック アストロサイトーマ pilocytic astrocytoma(毛様細胞性星細胞腫)
 特殊なアストロサイトーマ。小児や若年者、小脳、第3脳室底に多く発生する。境界明瞭な病変を作る。細長い紡錘形細胞が主体に増殖する。核異型は軽度である。低悪性、grade I

pilocytic astrocytoma

オリゴデンドログリオーマ oligodendroglioma(乏突起膠腫, 乏突起膠細胞腫)
 オリゴデンドロサイトに分化した腫瘍。原則的に、GFAP陰性で、突起のない類円形の腫瘍細胞である。

oligodendroglioma
oligodendroglioma

グリオブラストーマ、アストロサイトーマ、オリゴデンドログリオーマの遺伝子異常
 グリオブラストーマにはIDHに変異があるものとIDHに変異がないものがある。IDHの変異のないものは、EGFR変異やPTEN変異を持つ。IDH変異のあるものは、EGFR変異やPTEN変異はなく、ATRXの欠失がある。IDH変異のあるグリオブラストーマは、IDH変異をもつアストロサイトーマに関連して発生したと考えられている。
 オリゴデンドログリオーマは、1p/19pの消失を特徴とし、IDHの変異もみられ、ATRXの欠損はない。
 組織形態による分類ではなく、こうした遺伝子変異を基準としたグリオーマの組織分類がなされるようになってきている。

グリオーマの遺伝子変異

 イソクエン酸脱水素酵素(IDH)の変異を持つがんとしては、グリオーマのほかに、胆管癌、急性骨髄性白血病、いくつかの肉腫が知られている。
 変異したIDHは、イソクエン酸脱水素酵素としての機能を失い、2ヒドロキシグルタル酸(2-HG)の産生を触媒する活性を持つようになる。産生された2-HGはTET2(TETファミリー)を阻害する。TET2はDNAのメチル化を制御する因子の1つであり、TET2が阻害されると、DNAが異常なパターンでメチル化されることとなる。異常なパターンのメチル化が、形質転換や発がんを促す可能性があると言われている。

エペンディモーマ ependymoma(上衣腫)
 上衣細胞(ependymal cell, 脳室表面を覆う細胞である)に分化した腫瘍。脳室の近傍に発生することが多いが、脳室とは離れた脳内に病変が存在することがあるので診断時には注意が必要である。内腔側がEMAに染色される円柱形細胞に囲まれた小腺腔を作ったり、組織間隙の表面を円柱形細胞がおおったりする。GFAP陽性である。小腺腔や円柱形細胞が乏しい場合にhigh gradeのアストロサイトーマとの鑑別が問題となる。

ependymoma
ependymoma

**神経細胞系および混合神経細胞・膠細胞性腫瘍**

神経細胞への分化を示す腫瘍

ガングリオグリオーマ ganglioglioma(神経節膠腫)
 神経細胞とグリア細胞様腫瘍細胞が混在する腫瘍である。若年者の脳内に発生することが多い。低悪性度。grade I。

セントラル ニューロサイトーマ central neurocytoma(中枢性神経細胞腫)
 脳室内を埋めるように増殖し、類円形の腫瘍細胞が均一に増殖する腫瘍である。免疫染色でsynaptophysin陽性であり、電子顕微鏡でシナプス様構造が見られることがあり、神経細胞への分化を示す腫瘍と考えられている。中等度悪性、grade II。

**胎児性腫瘍・低分化腫瘍**

メデュロブラストーマ medulloblastoma(髄芽腫)
 小児の小脳に発生することが多い。細胞質の乏しい小型の細胞が充実性に蜜に増殖する。Homer-Wrightロゼットがときに認められる。細胞分裂像は多い。非常に悪性である、grade IV。

**髄膜腫瘍**

髄膜腫(meningioma)
 髄膜細胞に分化する腫瘍。通常は、硬膜に接着し、脳組織とは離れて存在する。紡錘形細胞の増殖よりなる。免疫染色でEMA陽性となる。

髄膜腫

**胚細胞性腫瘍**

胚細胞腫(germinoma)
 松果体に発生する精上皮腫のこと。

**その他の腫瘍**

頭蓋咽頭腫(craniopharyngioma)
 トルコ鞍上部に発生する若年者(20歳まで)の腫瘍で、ラトケ嚢の上皮から発生する。重層扁平上皮やエナメル上皮様の上皮の増殖からなり、充実性ないしは嚢胞状の病変を作る。

中枢神経系原発悪性リンパ腫(primary central nerve system lymphoma, PCNSL)
 脳原発の悪性リンパ腫と、リンパ節や他臓器に発生した悪性リンパ腫の脳浸潤とは、別に分けて扱われる。脳原発の悪性リンパ腫の大部分はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma, DLBCL)である。

転移性脳腫瘍
 血行性に転移して脳内に病巣を作ったり、髄膜腔に播種して脳表や脳室内に転移病巣をつくることがある。


末梢神経

末梢神経障害のパターン
 軸索変性とは、神経細胞や軸索の傷害があった場合に軸索が変性・消失することをいう。軸索が部分的に傷害された時に、そこより末梢の軸索が変性・消失することをWaller変性という。
 節性脱髄:軸索が比較的保たれつつ、シュワン細胞や髄鞘が傷害される。神経伝達速度が異常に低下することになる。

ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrome)
 急性の脱髄疾患。感染やワクチンをきっかけに自己免疫反応がおこって髄鞘が傷害される。単核細胞(リンパ球、単球)浸潤がみられる。
 急性に進行するが自然治癒する。筋力低下と軽度の遠位部感覚消失がおこるのが特徴である。神経伝達速度が低下する。

糖尿病性末梢神経障害
 糖尿病の長期経過例に、いろいろな末梢神経障害がおこる。


神経線維腫症(neurofibromatosis)

 神経線維腫症とは、神経線維腫などの腫瘍が多発する遺伝性疾患である。1型と2型がある。

1型(von Recklinghausen病):
 常染色体優性の遺伝性疾患。neurofibromin(17番染色体長腕にある)の突然変異がある。neurofibrominはRasに対する抑制調節因子であるので、Rasが活性亢進している。
 神経線維腫の多発、悪性末梢神経鞘腫、視神経膠腫(optic glioma)、色素性皮膚病変(カフェ・オレ・スポット)が見られる。

2型:
 神経鞘腫の多発、髄膜腫、上衣腫を生じる危険がある。神経線維腫は生じない。merlin遺伝子(22番染色体にある)の機能消失型突然変異がある。


白内障(cataracts)
 水晶体が混濁する病態。加齢と共に水晶体の混濁が見られるようになることが知られている。

緑内障(glaucoma)
 房水の排出不良などにより眼圧が上昇し、視野障害がおこる。視神経が圧排されて傷害されることがある。

網膜症
 高血圧、糖尿病では網膜の毛細血管に障害がおきることがある。

網膜芽細胞腫(retinoblastoma)
 網膜芽細胞腫は、小児の眼球内に発生する腫瘍である。RB遺伝子の変異が見られるが、RB遺伝子は癌抑制遺伝子として知られている。腫瘍発生の機序については「総論」を参照のこと。
 細胞質の乏しい小型の腫瘍細胞が充実性に増殖している。Flexner-Wintersteinerロゼットを形成する。

網膜芽細胞腫 網膜芽細胞腫

[2020.3]


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